空き家の相続を徹底解説!メリット・デメリット、手続き、費用、司法書士への依頼について

空き家の相続

空き家は近年増加の一途をたどり、野村総合研究所の調査では“2033年の空き家率は30.2%に上昇、空き家数は2,150万戸にのぼる” と予測されています。

住宅の除去・減築が進まない場合、2033年には空き家が2,000万戸超へと倍増

引用:野村総合研究所

『親が亡くなって実家を相続したものの、誰も住む予定がない…』など

空き家を相続し、その後の不動産管理や処分について悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

空き家を相続すると、建物管理や手入れ修繕・固定資産税の支払いなど、さまざまな義務や出費のリスクがつきまといます。そこで、このページでは空き家を相続した時に発生する義務やリスクについてくわしく解説し、対策方法も合わせて紹介します。

空き家は誰が相続する?

『両親が亡くなり、実家が空き家になった。しかしその後、誰もそこに住む者がいない…』
『もともと長い間、空き家状態で、管理が行き届いておらずボロボロの状態…』
『空き家を処分、できれば売却したいが、タダ同然でも売れない…』

など、空き家にまつわるお悩みは多種多様です。
では、空き家を相続しなければならなくなった時、まず「誰が?」空き家を相続しなければならないのでしょうか。

下の図は、相続人の順位(順番)と範囲を示したものです。例えば、ご両親が亡くなって相続が発生した場合、その子どもである図中の“ワタシ” が第1順位として空き家を相続することになります。

空き家の相続順位

財産は、遺言がなければ、相続人全員が協議の上、分け方を取り決める必要があります。
これを『遺産分割協議』といいます。

相続財産の分け方は法律で『法定相続分』として定められており、例えば、父親が亡くなった場合、妻が2分の1、子どもが2分の1とされています。

遺産がすべて現金であればきれいに等分できますが、不動産の場合、そう簡単にはいきません。

相続人が複数人いる場合、土地や空き家など不動産は「共有名義で相続する」のが一般的です。
しかし、この共有名義。管理や売却が面倒且つ複雑になり、トラブルになることも多いことから、私たちはできる限り「共有名義は避け、相続人は単独にする」ことをおすすめしています。

例えば相続人が兄弟2人の場合、遺産分割協議で相続人全員(この場合、兄と弟)の合意があれば、兄もしくは弟どちらか一人が遺産のすべてを相続することもできます。

つまり、相続人全員の合意があれば、法定相続分にとらわれずに、遺産をどのように分割するかは相続人の自由ということです。

もし、空き家の資産価値が極端に低かったり、誰も空き家を相続したがらなかったりする場合は、相続放棄限定承認も検討されるのが良いでしょう。

空き家の相続で発生する義務

発生する義務 その1:空き家の管理

例えば、『台風で空き家の屋根が飛ばされ、近隣の住居や通行人などに被害を及ぼした場合』、その建物の『所有者等』は、損害賠償など管理責任を問われることがあります(民法第717条)。

この『所有者等』は建物の名義人だけではなく、相続人や管理者、占有者(実際に使用している人)も含まれます。つまり、相続前・相続後に関わらず、相続人に当たる者に管理責任が発生する、あるいは現在も発生しているのです。

相続人の管理責任には上記の損害賠償だけでなく、建物の修理、不法占有者の排除、税金の支払い義務(次の段落で説明します)なども含まれます。

このことは『民法第918条』で定められており、相続人は自分が財産を管理する時と同様の注意をもって相続財産を管理しなければなりません。

発生する義務 その2:税金の支払い

空き家の相続で発生する義務には、固定資産税や都市計画税など、税金の支払いも含まれます。

固定資産税は『毎年1月1日時点での不動産所有者』に対して課せられる税金で、原則、すべての土地や家屋が対象となります。

たとえ誰も住んでいない空き家だとしても、管理義務がある限り、毎年税金が課せられるのです。しかも、空き家の固定資産税が6倍になる(!)という大きな落とし穴というべき注意点があります。

空き家に課せられる固定資産税が6倍に!?

2015年5月26日に『空家等対策の推進に関する特別措置法』という法律が施行されました。
これは空き家の放置によって起こるさまざまなトラブルを解消し、空き家の活用や処分を後押しするための法律です。
具体的には次のような空き家に対して特定空家等と認定し、“その空き家の所有者に対し、行政は修繕や撤去の助言・指導・勧告・命令・行政代執行を行うことができる” というものです。

  • 倒壊の危険性がある空き家
  • 衛生面において周辺に悪影響が及ぶと考えられる空き家
  • 管理が行き届いておらず、周囲の景観を損ねる空き家
  • その他、周辺の生活環境を著しく乱すと考えられる空き家

この特定空家、絶対に注意しなければならない点があります。
それは、空き家がこの特定空家に認定されてしまうと固定資産税が実質6倍になってしまうという点です。詳しく解説します。

固定資産税の算出について、通常の住居は『住宅用地特例』といい、固定資産税が6分の1になる優遇措置がとられています。ですがこの『特定空家等』に認定されてしまうと、この『住宅用地特例』の優遇措置はなくなり、実質固定資産税は6倍になってしまうのです。
誰も住まない、不要な空き家のために、実質6倍に跳ね上がった固定資産税を毎年毎年払い続けるのは誰しも避けたい問題ではないでしょうか。

この問題の回避に、相続放棄や限定承認などを含めた空き家の相続対策について、私たち司法書士にご相談される方が年々増えています。ちょうど、空き家戸数の増加に比例するように。

空き家の相続放棄などをご検討中の方へ

『ボロボロで価値が低い実家は相続したくない』
『駅から遠く、売却できなさそう…』など
空き家の相続放棄などをご検討中の方へ。下のページで相続放棄について、得られるメリットやよくある誤解ポイントなど、相続放棄を徹底解説しています。

相続放棄を徹底解説!メリット・デメリット、手続き、費用、司法書士への依頼について

限定承認って? 相続放棄以外の解決方法がある?

『誰も住まないから…(相続放棄しかないか。)』
『売れても二束三文だろう…(相続放棄しかないか。)』
と、このような場合、相続放棄しか解決方法はないのか?というと、必ずしもそうとは限りません。場合によっては、限定承認を選択する方がメリットを得られるケースがあります。
限定承認とは『相続(単純承認)』と『相続放棄』の良いところだけを取った相続方法ですが、下のページでくわしく解説しています。気になる方はこちらもご覧ください。

限定承認を徹底解説!メリット・デメリット、手続き、費用、司法書士への依頼について

 

 

空き家相続の基本対策は「売る・貸す・放棄する」

空き家を売る

空き家の処分について最も一般的な方法です。不動産は所有しているだけで固定資産税や都市計画税などの税金が掛かり続けます。しかし、空き家や空き地を売却処分することで売却利益が得られ、税金の支払い義務も消滅し、メリットが大きく最も簡単な処分方法でしょう。

ただし、とうぜんながら「売れる」ことが大前提ですが。
売れなければ次は、「貸す・放棄する」が選択肢になります。

空き家を貸す

借り手の好みや条件さえ合えば、空き家を賃貸物件にして貸す方法があります。

空き家のまま放置され、誰も住まなくなった家の傷みは非常に速いスピードで進みます。

換気不足や排水管の経年劣化などが原因で老朽化が進んだ結果、売るに売れない・貸すに貸せない、まさに不動産が「負」動産と化してしまいます。

賃貸物件として貸し出せるのであれば、日々の管理の手間が軽減できる上、賃貸収入も見込めます。またいつかの将来に、家や土地を活用する予定があるのであれば、それまで家や土地を手放さずに済みます。

しかしこれも、「貸せる」ことが前提になります。

売れない・貸せないとなれば、次は最後の手段、「放棄する」になります。
ただし、この「放棄する」は意外と知られていない注意すべき点があるので、必ず把握しておきましょう。次の段落で詳しく説明します。

空き家を相続放棄する

まず基本的な理解のために、相続放棄とは、亡くなった親などが残した『遺産の一切を引き継がない』ための手続きです。主に、親が借金をしていて、それを相続したくないときに取られる手続きです。

『相続したくない空き家』と『相続したい預貯金』などの財産が同時に存在する場合、相続放棄をすると『相続したい預貯金』も含めてすべて放棄しなければなりません。

この、相続放棄の大前提を理解した上で空き家を相続放棄するとき、下記のような点に注意する必要があります。

  • 相続放棄した後で『やっぱり家だけは相続したい』などといったことはできない。
  • すべての財産を相続放棄するので、『お金は相続、空き家だけ相続放棄』ということはできない
  • あなたが相続放棄すると、次の相続人に相続権が移り渡る
    ※親族間のトラブルの原因になることがままある
  • 空き家の管理義務まで相続放棄できない(くわしくは後述)

下のページで相続放棄によくある勘違いや要注意ポイント、得られるメリットなど、相続放棄を徹底解説しています。空き家や財産を相続放棄しようと検討している方はぜひご一読ください。

相続放棄を徹底解説!メリット・デメリット、手続き、費用、司法書士への依頼について

相続放棄しても、空き家の管理義務は残る?

相続放棄すれば、空き家の相続権は次の相続人に移るので、あなたが空き家を相続することはありません。しかし、法律では『相続放棄をしても、次の相続人が相続財産の管理を始めるまで、相続財産の管理を継続しなければならない』と定められています。
※民法第940条:相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない

つまり、相続放棄が成立したとしても、空き家の管理義務まですぐに放棄されてなくなるわけではありません。次の相続人(相続財産管理人)が決まるまで、空き家の管理義務はあなたに残っていることに注意が必要です。

そのため、相続放棄をしても空き家をめぐる周辺住民とのトラブルや賠償問題が起きてしまった場合は、あなたがその責任を負う可能性もゼロではありません。

もしあなたが空き家を『このまま相続して良いか』『相続を放棄した方が良いか』判断に迷う場合は、私たち司法書士にご相談ください。

もしかしたら「限定承認」で解決できるかも?

限定承認とは、『プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ』という相続手続きです。『亡くなった方の財産状況が不明瞭』な時に、この手続きを取られる人が多いです。

当社が解決した限定承認の事例

ご相談の経緯:疎遠だった叔父が亡くなり、それにより相続が発生したAさん。

叔父はご生前時、一軒家にお住まいでしたが、叔父に家族はおらず、死去したことで誰も住まない空き家状態に。
家族がいないため、Aさんに相続権が回ってきたのですが、その空き家は資産価値が高い物件で、売却益もじゅうぶん見込めるため、このまま相続して売却したいAさん。

しかし、叔父とは長年疎遠であったため、叔父の資産状況はまったく不明瞭。このまま相続して、後からまさかの「多額の借金」が出て困りはしないか?と不安でした。
このとき、当社 シャイン司法書士事務所がAさんに提案したものが「限定承認」です。

限定承認での解決:Aさんご協力のもと、叔父の信用情報の開示手続きを行い、債務状況を確認しました。消費者金融やカードローンなど、信用情報に債務はありませんでした。

そのまま相続(単純承認)しても良かったのですが、万が一、個人・友人間の借金や連帯保証人など、信用情報の開示では分からない予期せぬ借金が後から判明した場合。Aさんはその返済義務を負わなければならいので、このまま相続してしまうことに一抹の不安がありました。
そこで、当社は限定承認をAさんにご提案しました。

限定承認なら、プラスの財産を超える借金について、支払い義務がなくなります。つまりどれだけ最悪の事態、つまり、予期せぬ多額の借金が後から出てきたとしても、相続財産の範囲において債務を負えばいいので、Aさんはプラスマイナスゼロで相続を終えることができます。

おそらくAさんの叔父に借金はないので、このまま叔父の不動産を売却し、売却益を得て相続を終えるAさん。万が一の事態に陥っても、プラスマイナスゼロですから、安心して限定承認による相続ができました。
※結果的に後から借金が出てくることもなく、そして不動産も問題なく売却でき、Aさんは財産を相続されました。

こちらの解決事例のように、限定承認であれば『相続後に多額の借金が発覚した』場合でも、相続したプラスの財産の範囲で弁済すれば済みます。相続した方が損をすることがないので、安心して相続することができます。

手続きが複雑なため、まだまだ利用される方が少ない相続方法ですが、相続する空き家の状況によっては売却益を残せることがあり、メリットが多い手続きです。

限定承認のメリットやデメリットについて、下のページでくわしく解説しています。

限定承認を徹底解説!メリット・デメリット、手続き、費用、司法書士への依頼について

不要な空き家を『相続放棄したい』と考えていても、実は、相続放棄での解決がベストとは限りません
限定承認や相続(単純承認)など、さまざまな解決方法を考慮した上で、家族・親族全員が納得できる最善の方法を探すことが大切です。

シャイン司法書士事務所は、ご相談者さまや親族皆さまにとって、最善の解決策を提案し、そして解決へと導けるよう全力を尽くします。ぜひお気兼ねなくご相談ください。

シャイン司法書士事務所について

シャイン司法書士法人・行政書士事務所は2007年の前身の事務所設立以来、相続(単純承認)、相続放棄、限定承認、遺言書作成や遺言執行、民事信託(家族信託)、成年後見、空き家問題など、数多くの相続全般に関するご依頼を解決してまいりました。
司法書士4名、行政書士2名、ファイナンシャルプランナー(AFP)1名を数え、ご相談者さまのご依頼に幅広く対応できる体制作りにも努めてまいりました。

このWEBサイトのコンセプトでも宣言したように、“「相続」について日本一わかりやすい解説を目指し、ご相談者さまの納得と、最善の解決結果のご提供に全力を尽くす。”を信条に。
これからもご相談者さまの立場に立って、最善の解決結果とはなにかを模索し続け、使命に基づき問題解決に全力を尽くします。

相続のことなら、シャイン司法書士事務所にご相談ください。力になります。

インターネット面談、土・日・夜間の相談、全国対応、出張相談も可

現在の社会情勢を鑑み、シャイン司法書士事務所へのご来所が難しいご相談者へインターネット面談(Zoomや他 弊社利用オンライン会議ツールなど)もお受けしております。操作方法が分からない・自信がないという方もご安心ください。弊社スタッフがお手伝いをさせていただきます。

また、予約制で土日祝・夜間の相談対応、全国対応・出張相談も行っております。お仕事でお忙しい方や、体調面に不安がある方などにご利用いただいております。(すべてのご状況に対応できるわけではありませんので、ご了承ください)

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